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作品概要 ミュージシャンである作者が、山頂で曲を作ろうと富士山に登る。登山道に捨てられた数々のゴミを見るうちに、ゴミで楽器を作ることを思いつく。空き缶やペットボトルで作った楽器の奏でる音が、自作の曲と重なり合う。環境問題・ゴミ問題を、富士山の風景とともに静かに訴えかける作品。 |
「豊かな自然とゴミとの対照的なシーンが作品につながりました」 |
――はじめからゴミ問題をテーマにした作品を考えていたのですか? ふだんから山や川に出かけて自然のなかで音楽づくりをしています。その延長で、富士山に登って曲をつくろうという漠然としたイメージはありましたが、ゴミ問題を訴えようとは全く考えていませんでした。しかし、ゴミ問題を目の当たりにしてテーマが変わりました。樹海にも行ってみようと思い、撮影には結局、のべ10日間かかりました。 ――拾ってきたゴミで楽器をつくり、演奏するシーンは樹海で撮影していますね 登山とは違う装備も必要になるので、一度家に戻り出直しました。宿泊用のテントや数日間分の食糧、三脚も登山用の小型のものでなく大きな本格的なものを持って行きました。樹海に入るのはさすがに恐かったですね。紐を体につけて何百メートルか入ったところで撮影しました。 ――演奏シーンなど、ご自身の映像が数多く登場しますが 全部一人で撮りました。カメラの位置決めが難しかったですね。山頂など撮り直しがきかない場面では、撮ってから必ずチェックして、何度もやり直しました。カメラを撤収する時間などもかかりますから、普通に登るときの倍の時間はかかったと思います。 ――作品ではご自身で作曲された音楽が、とても重要な役割を果たしていますね 映像作品では、音楽はBGMとしての役割を果たすことが多いですよね。私は逆に音楽を中心にして、映像をそれに合わせるという作品づくりを試みています。 ――山に捨てられていたゴミを楽器にする発想が素晴らしいですね 富士山を登っていたときに、デジカメか何かの電池が落ちていたんです。溶岩と、そこに置かれていた電池とが、あまりに似合わないと感じました。「なんでこんな事をするんだろう」とも。富士山の頂上なんて、登ってきた人しか捨てない場所ですよね。それと、標高の高い場所ではゴミは土に還らない。新しいゴミから古いものまで取り混ぜてあって、その一つ一つにストーリーが見えたんです。 ――作品のなかでとくに気に入っているシーンはありますか? いやあ、すべてですね。撮影は体力的にも精神的にもかなりきつかったんです。とくに樹海は恐かった。作品を見ていると、撮影時のことを思い出して、いまでも涙が出てきます。ゴミ問題を取り上げたのは初めてでしたし、自分でも異色の作品になりました。 ――それが、ビデオフェスティバル応募につながったのですか? ふだんから自分の作品は、コンサートなどで上映しています。でもこの作品は、周囲の限られた人だけでなく、もっといろんな人に見てもらいたかったんです。 ――次回作の構想などがありましたら、教えてください。 アイデアはたくさんあって、例えば山のこだまを使って曲を作れないかな、などと考えています。音楽と映像の組み合わせも含め、実験的なことをしていきたいですね。 |
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