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2〜3年ほど前から業務用のVideo cameraでは、シネマライクなガンマカーブを備えるといったアプローチが増えている。現実に、これまでビデオで作品を撮ってきた監督やカメラマンからは、シネマライクなガンマに対する評価は高い。GY-HD100ではシネマライクガンマはもちろんのこと、ブラックストレッチ/コンプレスやニーポイントの変更、色に関してはカラーマトリックスやスキントーンディテールの調整など、かなり細かい設定が可能になっている。 |
近藤: |
「カメラの設定を変えることで表現の度合いが広がるというのは、よくわかります。ここまで細かいと現場での判断はなかなか難しいでしょうが、撮影前の準備段階でいろいろ試していれば、現場でも狙い通りのところに持っていけるでしょう。また自分の気に入った設定をSDカードに記録できるのも、すごくいいですね。このカメラを使い込んでいて、モニタまかせじゃなく経験で見た目との差を補完できるまでになったら、かなり強力です。実際にカメラマンのみなさんも、そこが楽しくてやっている人が多いんじゃないでしょうか」 |
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フィルムでの制作に比べて、ビデオ制作では大幅なコストダウンが見込める。この点で、より映画が作りやすくなる状況になるのだろうか。 |
近藤: |
「もちろんそれはあると思います。ただあまり作品がたくさんになりすぎてもハコ(映画館)のキャパシティもありますので、せっかく作っても公開まで1年以上も待たされるといった状況になるのであれば、それはあまりいいこととは言えないですね(笑)」 |
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フィルム撮影に比べてビデオ撮影では、その場でシューティングした映像が確認できるというのもメリットだが、映画の現場はこれによって変化するのだろうか。 |
近藤: |
「僕の現場では、ビデオで撮ってもあまりモニタチェックはしないんです。そのほうが現場の集中力が上がるんですね。ですから、チェックできるから現場が変わるということはないんじゃないかと思います。ただビデオでは撮影から編集までのスピードが格段に上がりますから、それはすごいことですね」 |
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集中力という点で、近藤氏はフィルムの人ならではの面白い話をしてくれた。 |
近藤: |
「これまでビデオで撮るときは、テレ端でつい手ぶれ補正を入れてしまってたんです。変な話ですが、このカメラは逆にそれ(手ぶれ補正)がないのがいいですね。撮影していてもそれだけ緊張感があります。撮影ってテンションが大事なんです。僕らは学生の頃からフィルムの大きなカメラを扱ってきましたが、その大がかりさ、不便さゆえに、役者さんも自分たちも気を張らなきゃいけない。ビデオはコンパクトだし、コストパフォーマンスもいいから手軽だと思ってしまったら、きっとダメなんだろうと思います」 |
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実際に機材から教えられるというのは、映像の仕事ではたくさんある。便利だからそのぶんいいものができるわけではない。不便なものでやって、基礎を固めるというプロセスはどんな仕事でも重要だ、と近藤氏は言う。実際に映画は、膨大な手間と労力を必要とする。だからこそ並みの熱意では続かない。本当に映画が好きか、自分にとってどれだけ大切か、最終的にはそこが重要になってくる。最後にこれからの近藤氏の目標をうかがった。 |
近藤: |
「僕らは大阪から、大学時代の仲間たちと制作チームのような形で東京に出てきたわけなんです。お互いがわかっているからこそ、一緒にやってきたし、やれる現場もあると思うのですが、いまはそれぞれ別の現場で新しい人たちと仕事をしています。そこではちゃんと自分のやりたいことや目指しているところを、人に説明できなければならない。そういうところは多くの現場に入ってみて学んだことですね。そしてまたいつか、大阪芸大出身の仲間と一緒にできる日のために、自分のスキルを上げてみんなを驚かせたいです」 |
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映画に限らず、VシネやPVなどにもどん欲にチャレンジする近藤氏。GY-HD100のようなフレキシブルなカメラの存在は、近藤氏のような新世代のクリエイターにとって強力な武器となるはずだ。 |