
木は音の伝搬速度が速く、同時に内部損失が高く余分な振動を適度に吸収する、まさに振動板の理想に近い素材です。また木目の方向により伝搬速度が異なるため、振動板に発生する共振を低減。ウッドコーンのナチュラルな音は、まさに自然からの贈り物だったのです。
“木”の美しい響きは、まさに楽器を予感させる素晴らしい可能性を秘めています。しかしウッドコーンを振動板として商品化する際には、立ちはだかる大きな壁がありました。立体成型を行うために高圧・高温でプレス加工すると水分が蒸発して割れてしまうのです。試行錯誤の結果、偶然にもこの課題を克服することを可能にしたのは「日本酒」でした。日本酒に含まれる成分が木の繊維に保湿効果を発揮させ、木を柔らかくし、割れずにプレス成型することを実現させたのです。
ウッドコーンの素材は、響きの美しい樺材です。
原木の中心に近い緻密な部分から極薄で削り出したシート状の板に和紙を貼り、日本酒を含浸させて軟化。細心の注意を払いながらプレス加工し、コーン形状に成型するという9件の特許を申請中の工程で仕上げています。
SX-WD500のウーハーは、より豊かな中低域の再現をめざして、ウッドコーンとしては最大口径の14.5cmの振動板を新開発。0.4mm厚の樺材によるウッドコーンとともに、センターキャップも同じ素材で統一。そしてLシリーズに使われている軽量でロスの少ないEPDM発泡ラバーエッジで支えました。さらに磁気回路には、SX-L77のウーハーと同等の強力な45φ×30mmアルニコマグネットによる内磁型磁気回路を採用。これらを堅牢なアルミダイキャストフレームでがっちりと支えることで、ウッドコーンのよさを最大限に引き出すユニットに仕上げています。美しい響きはもちろん、ふくよかな量感を実現しています。
“木”の品位と美しい響きの統一感を求めて、ツィーターも振動板を新開発。わずか0.11mmの樺材を2枚貼り合わせた0.22mmという薄型軽量ウッドドームで、より自然な音色をめざしました。さらにディフューザー形状にも検討を重ね、高域特性を大幅に改善。そして新しい振動板の魅力をあますことなく引き出すために、磁気回路は超強力なネオジウムマグネットでドライブ。中低域の量感にふさわしい、つややかな表現力を備えもつ高域再生を実現しています。
楽器が音の美しさをボディに求めるように、SX-WD500も音の完成度をキャビネットにゆだねました。その素材は、フロントバッフルにSX-L9と同じホワイトシカモア突板を使い、天板、裏、両側面はメープル突板による高品位な全光沢塗装仕上げとしました。また側板にはSX-L77と同じ曲面構造を取り入れ、板厚は全面21mm厚、さらに底面には30mm厚の台座を加えた分厚い48mmとし、真鍮削り出しの大型フットと合わせて、低域の安定度を大幅に高めています。
音の入口である入力端子にもSX-WD500はこだわりました。素子にはL77クラスの素材を惜しげもなく採用。また真鍮削出しの大型ケーブル対応スピーカー端子はLシリーズより大きく、バイワイヤリング時に使いやすい配置にも工夫を凝らしました。ショートワイヤーは、内部配線と同じワイヤーを4本使用した贅沢な設計。さらにコイル振動の悪影響を防ぐため、ネットワークボードはローパス側とハイパス側を完全分離することで高音質を徹底追求しています。