「TVF2006」入賞作品の傾向と話題 inquiry


2006年2月18日 報道発表

第28回Tokyo Video Festival 「TVF2006」大賞2作品が決定

「ビデオ大賞」は、中井佐和子さん(23歳・奈良県)の
『羽包(はぐく)む』

「日本 VICTOR 大賞」は、Ji Seung Wooさん(24歳・韓国)の
『Family(家族)』



〜日韓の若者が両大賞を受賞〜





 日本 VICTOR (株)主催・第28回Tokyo Video Festival 「TVF2006」には、世界35の国と地域から2,291作品(国内910作品、海外1,381作品)の応募があり、「優秀作品賞」(30作品)、「佳作」(70作品)を選出し、最終審査の結果、「ビデオ大賞」と「日本 VICTOR 大賞」(各1作品)を決定しました。今回2つの大賞は、日韓の20代前半の若者が受賞しました。

 「ビデオ大賞」は、奈良県の中井佐和子さん(23歳)の作品『羽包(はぐく)む』が受賞しました。高校生で母親となった友人に、作者がカメラを向けたインタビューを中心に、その生き方を浮き彫りにした作品。登場人物と作者が一体となって語りかけます。審査委員の高畑勳氏は講評の中で、「彼女を暖かく取りまく味方の存在が感じられて、全体が『はぐくむ』という言葉にぴったり」と高く評価しています。

 「日本 VICTOR 大賞」には、韓国のJi Seung Woo(チ スンウ)さん(24歳・男性)の作品『Family(家族)』が選ばれました。田舎で一人暮らしをする老母を、子どもたちの家族がキムチづくりのために泊まりがけで訪ねた2日間を描いたドキュメンタリー。親子の何気ない会話や行動の中に見え隠れする様々な思いを、非凡な演出力で表現しています。「普段着の家族映像から韓国、日本の現実が見えてくる点が光る」(小林はくどう氏)などと評されました。

 また、一般の方々のインターネット投票で選出される「ピープル賞」には、『レモン』(松原ルマ ユリ アキズキさん・15歳・兵庫県)、『羽包(はぐく)む』(中井佐和子さん・23歳・奈良県)、『明衣(めい)の沢登り』(植竹豊文さん・40歳・千葉県)の3作品が選ばれました。



Tokyo Video Festival (TVF)について

ビデオ映像によるメッセージの伝達や自由な映像表現の可能性を広げるとともに、社会や生活に密着した映像文化の普及、振興を目的として、1978年から毎年1回開催している世界最大の市民ビデオ映像祭です。
応募作品は20分以内のビデオ作品であれば、テーマ・題材は自由です。またプロ、アマ、個人、グループ。国籍、年齢を問わず誰もが応募できるオープン event です。

第28回Tokyo Video Festival 「TVF2006」各賞の内容

・「ビデオ大賞」 (1作品): 賞金50万円(「優秀作品賞」の賞金を含む)、賞状、記念トロフィー、 VICTOR 3CCDハードディスクムービー
・「日本 VICTOR 大賞」 (1作品): 賞金40万円(「優秀作品賞」の賞金を含む)、賞状、記念トロフィー、 VICTOR 3CCDハードディスクムービー
・「優秀作品賞」 (30作品): 賞金10万円、賞状、楯
・「ピープル賞」 (3作品):
・「佳 作」 (70作品): 賞状、楯

審査委員(敬称略)

大林宣彦(映画作家)、小林はくどう(ビデオ作家・成安造形大学教授)、佐藤博昭(ビデオ作家・日本工学院専門学校教員)、椎名誠(作家)、高畑勳(アニメーション映画監督)、羽仁進(映画監督)、北見雅則(Japan Victor Co., Ltd.)


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<第28回Tokyo Video Festival 「TVF2006」入賞作品の傾向と話題>

1. 被写体と一体になって主張する、「ビデオ大賞」受賞作品『羽包(はぐく)む』

 「ビデオ大賞」の『羽包む』(中井佐和子・23歳・奈良県)は、高校生で母親となった友人へのインタビューを通して、その生き方を浮き彫りにしたドキュメンタリー。妊娠から出産、離婚に至る中で生じた心の葛藤と子育てに追われる生活を経て、友人がシングルマザーとして自立するまでを描いています。
作者と登場人物の友人が一体となって淡々と、しかし熱く語りかける作品です。
 「現代ならではのテーマにストレートに、そしてかろやかに取り組んでいて、押しつけがましくなく、しかし実は重厚に、悩める元気な"隣人の人生”をつたえている」(椎名誠氏)、「彼女を暖かく取りまく味方の存在が感じられて、全体が『はぐくむ』という言葉にぴったり。彼女の友人である作者もまた味方の一人で、身近に二人をずっと見守ってきたからこそ、このすばらしい安定感が生まれたのだろう」(高畑勳氏)など、高い評価を受けました。

2. 「日本 VICTOR 大賞」受賞作品『Family(家族)』をはじめ、家族のあり方を問う作品が多数入賞

 今回は、作者がそれぞれの目線で「家族」の姿やあり方を問う作品が多く入賞しました。「日本 VICTOR 大賞」を受賞した『Family(家族)』(Ji Seung Woo・24歳・韓国)は、夫の死後も誰にも頼らず田舎で一人暮らしを続ける老母と、一家総出の恒例行事である"キムチづくり”のために帰省した兄妹たちが過ごした2日間を描いたドキュメンタリー作品。一見他愛なく見える会話の中に交錯する親子の様々な思いを見事な演出力で表現しています。また、さりげなくも計算されたカメラワークや巧みな場面構成など、映像表現力も光る秀作です。
 その他、父の課した"大人への儀式”・沢登りに奮闘する娘の姿を収めた『明衣(めい)の沢登り』(優秀作品賞・植竹豊文・40歳・千葉県)や祖父秘伝のラーメンスープを家族全員で家宝として完成させる『家宝のつくり方』(優秀作品賞・宮澤晴恵・22歳・長野県)、殺伐とした食卓が家族崩壊を予感させるアート作品『味』(佳作・日本工学院専門学校Project A・東京都)など、「家族」への思いが様々な描き方で作品に結実しています。

3. ヤングパワー炸裂! 20代以下が入賞の半数占める

 2つの大賞受賞者に象徴されるように、「TVF2006」では若者層の躍進が際立ちました。入賞100作品では約半数の49点、また「優秀作品賞」を見ても30作品のうち半数の15作品を20代以下の作者で占めています。これは過去の「TVF」にはなかったことであり、若い世代がビデオを自己表現のツールとして本格的に使いこなすようになったことが窺えます。
 10代の活躍も目立ちました。『水色のしずく』(佳作・浦岐美子/松本加奈子・神奈川県)、『レモン』(優秀作品賞・松原ルマユリアキズキ・15歳・兵庫県)、『Vivre SDF a Paris(パリの路上生活者)』(優秀作品賞・Lea MOSZKOWICZ・17歳・フランス)、『LA ESPERANZA BLANCA(白い希望)』(佳作・SamuelHernández Sainz・18歳・スペイン)、『The Second World Year of 2005(第二の世界− 2005年現在編−)』(佳作・Kim Kyong Yoon・19歳・韓国)など、若い才能が輝く作品が入賞しています。

4. 優秀作品賞の半数を女性が占め、入賞率でも男性を圧倒

 女性が映像制作に素晴らしい才能を発揮。優秀作品賞30作品のうち実に半数の15点を女性作者による作品が占めています(うち1点は男女共作)。全応募作品の中で女性からの応募は2割強で、入賞の確率では女性が男性を圧倒する結果となりました。
 椎名誠氏も審査講評の中で、「個々の作品で特に感心したのは、若い女性による作品に『個性』と『感性』が横溢していて、これは文学の世界などで今、若い女性が主力になって躍進してきている事とどこかで時代の色合いが通底しているように思った」と評しています。

5. アカデミー賞受賞作品も入賞、世界の現実を映すドキュメンタリー

 優秀作品賞の『Chernobyl Heart(チェルノブイリ・ハート)』(Maryann De Leo・53歳・アメリカ)は、2003年のアカデミー賞・ドキュメンタリー最優秀短編賞受賞作品。チェルノブイリ原発事故がベラルーシの子どもたちに与えた深刻な影響を克明に捉え、その恐怖の実態を暴き出しています。
 例年通り、今回も応募作品のジャンルとしてはドキュメンタリー作品が最も多く、2つの大賞作品をはじめ、優れた作品が数多く入賞しました。木造の古橋にまつわる家族のエピソードを綴った『橋−母と祖母の物語』(優秀作品賞・内村牧子・20歳・滋賀県)、大都市の近郊で越冬する動物の生態を捉えた『都会の河川敷で、コミミズク、トラフズク』(優秀作品賞・草柳正治・69歳・神奈川県)、北京郊外を走る鉄道の騒音・振動の被害に住民らが立ち上がる『Beside The Circulating Railway(環状線)』(優秀作品賞・Liu Chuan Ping・47歳/ Zheng Liu Jun・42歳・中国)など、人間や自然、社会現象に向けられたカメラが現代世界の一端を浮き彫りにしています。

6. 表現手法として定着してきたアニメーション作品の競演

 ビデオ制作用ハード・ソフトの著しい進歩により、かつては技術的に難しいとされていたアニメーションの表現手法が、ビデオ創作の一つとして確実に定着しつつあり、今回もハイレベルな作品が出揃いました。コンピュータ・グラフィックス(CG)を駆使した2 つの優秀作品賞受賞作品、『tough guy! 2005』(岸本真太郎・神奈川県)や『スタンド・バイ・ミー〜機巧的人生模様〜』(南澤伸・29歳・京都府)をはじめ、人形アニメーション作品『One Day Eterniday』(佳作・Jean Pierre Tenshin・41歳・東京都)、クレイアニメーション作品では『O Ditado(書き取り)』(佳作・Studio Elementare・ブラジル)など、技法も多岐に渡りました。

7. ドラマ、作る楽しみ、観る楽しみ

 自由な創作で、見応えのあるアマチュアのドラマ作品が続々入賞しています。仲は良いが会話の少ない夫婦に起こった不思議な出来事を描く『Ohayo』(優秀作品賞・岡田信也・37歳・東京都)、地域活性化のため商店会総出で制作した素人コメディドラマ『パパは彦レンジャー』(佳作・本町1丁目商店街振興組合・熊本県)、幾重にも伏線が引かれた不思議なバスジャック劇『Pasaje a la libertad(自由への切符)』(佳作・Patricio Benoit・31歳・アルゼンチン)、田園地帯の子供たち3人と水牛とののどかなエピソードを描いた『Up-country children(田舎の子供たち)』(佳作・Woravuth Lakchai・26歳・タイ)など、見慣れた TV Set ドラマとは違い独特の味が光る手作りのドラマ作品がいっぱいです。


「ビデオ大賞」
『羽包(はぐく)む』

作者:中井佐和子さん/ 奈良県
「日本 VICTOR 大賞」
『Family(家族)』

作者:Ji Seung Woo (チ スンウ)さん/ 韓国


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