2回にわたって、JVCジャズ・フェスティバル・ニューヨークの知られざる一面に焦点を当ててきた。最終回は、NYの夏の風物詩とも言える野外 event, セレブレイト・ブルックリン!との提携コンサートに登場した、クレイグ・ハリス(tb,vo)・グループ、ラヴィ・コルトレーン(ts)・クァルテット、グルーヴ・コレクティブを紹介したい。
プロスペクト・パーク
マンハッタンの中心部から地下鉄で30分ほど南に向かい、イースト・リバーを渡ると、多彩な人種のコミュニティが同居しているブルックリンに到着する。その憩いの場である最大の公園、プロスペクト・パークの野外ステージで、6月半ばから、8月半ばまで、コンサート、映画上映、演劇、ダンス・パフォーマンスと、さまざまな企画を、$3.00の寄附だけで参加できるセレブレイト・ブルックリン!は、今年で29回目を迎えた。数年前から、JVCジャズ・フェスティバルも、6月の期間中の週末一晩を、ジャズ・コンサートで盛り上げている。マンハッタンの、フォーマルな大ホールとはまた趣が異なり、くつろいだ雰囲気の中で地域社会の日常生活に密着したコンサートが楽しめる。
クレイグ・ハリス(tb,vo)
夏時間でまだ明るい、金曜日の午後7時から3本立てのライヴは始まった。トップ・バッターは、クレイグ・ハリス(tb,vo)。70年代の前衛的なサウンドの、ロフト・ジャズ時代からの精鋭で、アフリカ系アメリカ人たることのこだわりを前面に打ち出した音楽活動を、展開してきたアーティストだ。難解なアヴァンギャルド・ジャズと思いきや、実力派シンガー、カーラ・クックを擁した、ゴキゲンなソウル・ミュージック・ユニット、ネーション・オブ・イマジネーションでの登場。。ハリス自身も熱いトロンボーン・ソロとともにヴォーカルを執り、大喝采を浴びていた。
ラヴィ・コルトレーン(ts,ss)
60年代ジャズの精神的支柱であり、革新者であったジョン・コルトレーン(ts,ss)の忘れ形見のラヴィ・コルトレーン(ts,ss)は今年41歳、長い時間をかけじっくりと熟成されてきた晩成型のプレイヤーだ。今年の1月には、母であり、最後のジョン・コルトレーン・クインテットの重要メンバーであったアリス・コルトレーン(p,org,harp)が急逝したが、音楽的にも大きく成長し、父母の衣鉢を継ぎ、その精神性の高い音楽は、異彩を放っている。現在はニュージャージー州在住だが、以前はプロスペクト・パークのすぐ近くに居を構えていたラヴィは、息子の小学校の同級生やその親達にステージの上から呼びかけ、地元での演奏を楽しんでいた。しかし、演奏はきわめてシリアス。若手ドラムスのホープ、EJ・ストリックランドとの激しいソロの応酬は、ジョン・コルトレーンと、エルヴィン・ジョーンズ(ds)のつばぜり合いのような演奏を彷彿させる。亡き母に捧げた”ジャガディシュワル”、エンディングは父の代表曲”ジャイアント・ステップス”で、自らのアイデンティティを、高らかに宣言した。
グルーヴ・コレクティブ
1994年にニューヨークで、UKのアシッド・ジャズ(クラブ発信のダンサブルなジャズ)の影響を受けて結成されたグルーヴ・コレクティブ。最新作"ピープル・ピープル・ミュージック・ミュージック”がグラミー賞にノミネートされ、今年も快進撃を続けている。ジャズ、ファンク、ラテン、ヒップホップといったジャンルのあらゆる要素を、ダンサブルにミックスしたその音楽は、野外ステージも巨大なダンスホールにしてしまい、夏のフェスティバルでは引っ張りだこのグループだ。この日も、巨匠ティト・プエンテ(per)に捧げたラテン・チューンから始まった。タイトなリズムの上で、ジェイ・ロドリゲス(ts,fl)と、カーティス・フォークス(tb)の鋭いホーンが切り込んでくる。ドラムスのシライシ・ゲンジは、「この公園のすぐ近くで育ったんだ。」と熱く語り、旧友から声援を受けていた。
3時間を超す3グループのコンサートの最後には、ラヴィ・コルトレーンも再びステージに登場し、大ブローイング大会。万雷の拍手に包まれて、幕を閉じた。中空には、満月が浮かび、余韻に浸りながら家路につく人々を、照らしていた。まだニューヨークの熱い夏は、始まったばかりだ。
(6/22/2007 於Prospect Park Bandshell、Brooklyn NY)
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