「競い合い、高め合う」のは、２０世紀初頭の美貭であったろう。然し「競争社会」は畢竟、互いを潰し合う諍いや「戦争」を生み、「低め合う」結果に至った。２１世紀は、では「譲り合い、深め合う」ことを試みては如何か。「ナムバー１」より「オンリー１」を。「コンテスト」ならぬ「フェスティバル」の、真の時代の到来だと思う。

市民のビデオがマスメディアにとって替わって、文化を変えつつあると実感する。その証拠にスマトラ沖大地震による大津波の報道映像は殆どが市民のスナップビデオであったし、二つ目は市民の表現が謳歌しているＴＶＦの様々な応募作だ。ぼくの楽しみは作品の中にそれぞれの人生の「普段着」を見つけることだ。

ビデオには、いったい何が映るのか？この問いは古びていくことがありません。そしてTVFには、毎回すばらしい答えが返ってきます。それらはどれも誰かが生きた証しだし、その誰かの、唯一のメッセージでした。ビデオ作品にはビデオ市民である「あなた」が見えるから美しいのです。今年はどんな「あなた」に会えるのでしょうか？

ここ数年の応募作を見て思うのは作品の個性がいよいよ際立ってきたということです。美しい画面やいい画面をどう撮るかという時代から、何をモチーフにどんなテーマでいかに見るものの心を掴むかという本質的な精度が問われる段階になってきたように思います。数多くのすばらしい作品に心を掴まれることを期待しています。

昨年はじめて審査に参加しましたが、面白く意義深い作品の多いことに感嘆しました。アニメーションの水準の高さにも目をみはりました。今年も、人に見せたい、見せるに値する、と思う作品ができた方は、ぜひ応募してください。みなさんの作品を見せて頂く日々を楽しみに待っています。

「自分の心の中を見詰めるだけでは、ダメだ。心に浮かびあがってくる世界の姿を、イメージに捉えよう。このことに気づいて幾つもの秀作が生れました。市民生活や市民運動のビデオを作る人たちも、すべての人の心にある筈の｢健全なエゴイズム｣（？）を通してイメージにしたらどうでしょうか？ご参考までに。

ＴＶＦ２００６は前回にまして、「個の香り」がより強くなっていく。「個」の主張が造る新しいジャーナリズム・物語、進化していくＴＶＦが見えるようです。今回も新しい挑戦をしていきます。皆さんと一緒に新しいHistory を作ることを楽しみにしています。