都立武蔵高校様では、平成17年度より、情報化・国際化時代に対応する教育を推進するために、従来より活用していたLL装置(集団学習装置)に変わり、LL機能を持ったパーソナルコンピュータシステム(以下、CALLシステム)を整備(1教室分・賃借方式)することになりました。同校では、CALLシステムを初年度に整備することになり、平成17年1月20日より、東京都教育委員会が定める標準仕様に基づき準備・検討を重ねた結果、同年5月、当社のフルデジタルCALLシステム『WeLL』がLL教室に導入されました。同校の教育方針のひとつに、「何よりも授業を大切にした教育課程の編成—国語、数学、英語での増加単位と習熟度別授業を含む、きめの細かい授業の実施で、実践的な学力を養成する」という重点目標があります。
今回『WeLL』が導入されたのも、こうした教育方針、とりわけ英語教育の基礎学力の充実を図ることを目的としたものです。平成17年5月に導入されてからほぼ半年間、同校でどのように『WeLL』を活用しておられるのか、英語科の古田舞教諭にお聞きしました。
(※WeLLについては、Click Hereをご参照ください)
●教科:外国語(オーラル・コミュニケーションI、英語I、II)、美術、国語、公民(倫理)、保健体育、総合学習
●教科外:生徒会活動、クラブ活動、自習(月・木は放課後開放)
『WeLL』は主に外国語教育のために使われますが、『WeLL』はLLのほかにパソコン・視聴覚の機能があるために、教室が空いているときには、PC・AV機能を使った授業等にも積極的に使われています。たとえばPC機能では、倫理・社会の調べ学習、部活の映画制作の編集、AV機能では英語I、IIのVTRの活用など、当初の予想を超えて効果的かつ多目的に使われています。
1. 授業科目
・ 1年生の必修「オーラル・コミュニケーションI」〜リスニング(1時間)。
40人クラスを半分に分けた、少人数授業。(「オーラル・コミュニケーションI」は週2時間実施、あとの1時間は、外国人講師(ネイティブ)が普通教室で授業を行っています。)
・ 3年生の選択「オーラル・コミュニケーションI」〜リスニング(2時間)、総合学習(5時間)。
*「オーラル・コミュニケーションI」の授業は国際人としての英会話を強化するための授業として実施されています。
2. 『WeLL』を使っている教諭
英語担当教諭は10人いますが、今のところ『WeLL』を使ってリスニングの授業を行っているのは5〜6人です。しかし、大学のセンター試験ではリスニングの試験があるために、他の教諭達にも『WeLL』の活用が広がろうとしています。
3. 使われている主な教材ソフトウエア
●WBT型学習ソフト=旺文社DI・英語レベルアップ講座(TOEIC、英検教材)
●対話型英会話練習ソフト=ラーニングウエア・Native World Pro
●常駐型和訳・英訳辞書ソフト=Babylon-Pro
●ブラウザベース・マルチメディア辞書ソフト=インターチャネル・電子広辞苑
●プリンタ制御ソフト=カシオ・PRINTSTAGE for School
●統合オフィスソフト=Microsoft Office 2003 Professional
●コンテンツ作成ソフト=Adobe Photoshop Elements、Macromedia Flash MX、IBM Home ページビルダー、Ulead VideoStudio他
武蔵高校ではLLシステムが導入の当初から積極的かつ継続的に活用されてきました。
古田教諭がLLシステムを使った経験は大学1年生の時だけで、武蔵高校に新任で赴任した時(平成16年4月)には3年間のブランクがありましたが、同校の先輩教諭に教わりながら1年間、LLを使った授業を行うことができました。しかし、古田教諭ご自身は、PCについてはWordとExcel等のアプリケーションソフトを使うぐらいで、ネットワークについても専門ではなく、CALLシステムを使った経験もありませんでした。また、生徒も概ねPCの経験は浅く、「PCがよく分からなくても大丈夫なのかな」という不安があるまま、平成17年5月に『WeLL』が導入されました。
5月設置直後の合計約6時間の当社による取り扱い説明や、その後のフォロー、そして教諭ご自身の慣れもあり、半年余り経った平成17年後半には、何ら支障なく授業が進められています。
一方、生徒の側は音声学習が中心なので、録音の仕方、教材の聞き方などを1〜2回説明すれば、後はあっという間にマスターしてしまい最初に感じていた、「専門的な知識が無くては、使えないのではないかという」という不安はなくなりました。
LLの時と比較すると、生徒達の集中度が随分違うな、と感じます。
やはり、個々のペースで聞き取りや録音・提出などの作業をすることができるという、CALLならではの特徴がよく出ていると思います。たとえば、英語を話すことにおいても、普通教室でそれまで生徒から感じられた"恥ずかしい”という印象はなくなりました。「先生、上手くできたから聞いて」とか、終業のチャイムが鳴っても「先生、まだ待って」と、話すことに対して積極性が感じられるようになりました。また、Wordのファイルで書き取りの模範解答を転送して答え合わせをしたり、必要に応じていたずら防止の操作ロック機能を併用するなど、PCベースならではの便利な機能を併用して、より効率的に授業を行うことができるようになりました。
導入後の生徒の反応は良く、昨年までLLを使っていた2年生からは羨望の声も聞かれます。「オーラル・コミュニケーションI」の授業で、PCを起動して→ headphones を装着してリスニングのテストを受けて→自分の声を録音して→先生に提出、という一連の作業が、普通教室やLLでは感じられない、何かをやったという満足感につながっているのではないでしょうか。操作も簡単で、最初の1〜2回の授業で教えるだけで生徒達はすぐに使いこなします。
また先生達にとっては、導入前に懸念されていたシステム入替えに伴うトラブルや混乱は無く、使いやすいシステムであったことに安心すると共に、センター入試でのリスニング試験にも好結果が発揮できると、大きな期待が寄せられています。
LLシステムでは一斉授業が主でした。しかし『WeLL』にはPCとネットワークの柔軟性を利用したさまざまな機能があるので、先生と生徒との一対一のコミュニケーションが容易にできるだけでなく、送られてきた教材を生徒が何回も聞き、練習録音を繰り返し、個別に自分の練習結果を提出することができます。自分のペースで学習ができるために、納得のいく授業を受けることが可能になりました。
1. リスニング
CD教材をその場で一斉録音したり、あらかじめ教材作成ツールで準備した音声教材を生徒たちに配布し、個々のペースで教材を繰り返し聞かせます。
2. ディクテーション
教材を聞かせて書き取りを行わせます。教材作成ツールで作成された教材についてはあらかじめ原文・訳文を埋め込めるため、生徒個々に答え合わせができます。また、解答のWord文書を画面一斉送信で生徒のパソコン画面に映し出し、一斉に答え合わせをする場合もあります。
3. リピーティング、シャドウイング
教材を聞きながら、生徒が個々のペースで練習録音を行います。センテンス毎に交互に録音したり(リピーティング)、教材再生と同時に録音したり(シャドウイング)と、自由に選択できます。
4. 練習録音ファイルの提出
練習録音した音声ファイルを、出来上がった生徒から順次、個別に提出します。何度でも上書き録音ができるため、生徒たちは納得がいくまで練習を繰り返し、上手くしゃべることができた録音ファイルを提出します。