音があると空気の圧力が少しだけ変わります。気圧計には出ないくらいほんの少しなのですが、この変化した分の圧力を音圧といいます。また、音の大きさを表わすのに一般的に使われる量は音圧レベルで、音圧の大きさ単位はdB(デシベル)です。
いきなり式が出てきて恐縮ですが、音圧レベルと音圧の間には
SPL;音圧レベル(dB)SPL;Sound Pressure Levelの略
P1;その音の音圧(Pa(パスカル);N/m2)
P0;基準音圧(=2×10-5N/m2)
という関係があります。
つまり、ある音の音圧レベルというのは、その音の音圧P1が基準音圧P0の何倍かという値の対数を取って20倍した値です。そして、P0というのは人間が聞くことの出来る最小の音圧なのです。また、音のエネルギーは音圧の2乗に比例しますので、
というようにも表わせます。
ここでいくつかdBクイズです。数式ばっかりですがまだまだ逃げないでください。実はそんなに複雑な計算ではありません。それでも「イヤ!」という人は答だけ覚えておいても損はしませんので読んでみましょう。
対数計算から遠ざかって久しい方のために、
です。それでは行ってみましょう。
Q1 人が聞こえる最小の音の音圧レベルは何dBでしょう?
答 @式のP1がP0と同じになるので
答えは0dBです。
Q2 同じ音量を出している音源の個数が1個から2個になったら音圧レベルは何dB上がるでしょう?
答 音源が2倍になると音のエネルギーも2倍になると考えて、A式より
P1;音源の音圧
よって答は約3dBです。
ついでに、音源数が10個から20個になった場合、個数は10個も増えるのですが、音圧レベルはというと1個が2個に増えた場合と同じ3dBです。「何個増えた」ではなく「何倍に増えた」というのがdBの基本なんですね。音源数が10倍になった場合は同様の計算方法で10log1010 =10dBアップとなります。
Q3 マイナス(0dB以下)の音圧レベルは存在するでしょうか?
答 音圧レベル0dBというのは、音圧が0なのではなくて、その音の音圧が基準のP0と同じだということです。ですからもし音圧がP0より小さくてP0の1/10だったとすると、@式よりその音の音圧レベルは20log100.1 =20×(−1)=−20dB ということで音として聞こえる聞こえないは別にして値としては存在します。
ところで、どうしてこんな分かりにくい単位を使うんでしょう?それには2つ理由があります。
1つ目の理由は、人の耳に音として聞こえる音圧の範囲が広すぎて、聞こえる最小の音圧をP0とすると最大は10000000P0なんていう数字で、表示したり扱うのが大変。これをdBで表示すると0dBから140dBとぐっとコンパクトになります。
2つ目の理由は、dBは人の感覚に合った単位なんです。音圧が1から10になった時と100から1000になった時、(どちらも10倍になった時)人は同じ位音が大きくなったように感じます。何倍になったか、というのは何dB上昇したかということなので、dBを使うと「こっちの方が××dB高い」とか「低い」とかいうように感じ方の差を物理量の差で言い表わすことが出来るのです。
話は変わりますが、少し前のTVコマーシャルで「我が社の新製品は騒音の90%をカットすることに成功しました。」というのがありました。これは恐らく騒音のエネルギーの90%をカットした=エネルギーが1/10になった=騒音が10dB下がった、ということだと思うのですが、10dBカットしたというよりはずっとインパクトが強くてうまい言い方ですよね。買った人は「これで90%カットされてんの?」と思うかもしれませんが・・・。