カメラレンズ、CCD(撮像素子)から入力される様々なデジタル映像信号の特徴を検出し、高解像度化、ノイズ低減、色再現を向上させているハイビジョンVideo camera向け高画質画像処理エンジン「HDギガブリッド」。この技術は長年 VICTOR が培ってきた「画像処理技術」によって実現したものです。
この画像処理エンジン「HDギガブリッド」についてカムコーダー技術部 阿蘇教博にインタビューしました。(このインタビューは2007年2月に行なったものです)
CCDなどの撮像素子から入力される信号はRGB(光の三原色)の生デ−タであり、そのままでは TV Set などで見るための所要の画質になりません。 TV Set で見る際の最適な画像とするため、Video cameraの中で画像(信号)処理が行われます。
「HDギガブリッド」はこの画像処理を行なうエンジンで、高画質化のために1920×1080/60Pのプログレッシブ処理を用いて、標準画質と比べ約5倍の情報量を持つフルハイビジョンデ−タをリアルタイムに高速処理し、高精細で豊かな色彩を可能にします。
私たちは、従来の標準画質のVideo cameraの段階から、信号処理をプログレッシブ処理で行う技術を採用していました。また、高画質カメラ用信号処理の要素技術としても、次世代のハイビジョンVideo cameraへの展開を見据えて取り組んできました。これらの培ってきた技術を発展させ、2003年には、当時世界初となる家庭用ハイビジョンVideo camera「GR-HD1」(HDV方式)を商品化ました。
今回の1920×1080のフルハイビジョンVideo cameraでも、このような VICTOR の蓄積技術であるプログレッシブ処理で高画質な映像表現を目指しました。
TV Set の走査方式にはインターレース走査とノンインターレース走査(順次走査、プログレッシブ)の2つがあります。フルハイビジョン画像のインターレース走査では1920×540の偶数/奇数、2回のフィ−ルド走査で1920×1080となる1枚のフレ−ム画を作ります。これに対してプログレッシブ走査では1回の走査で1920×1080となる1枚のフレ−ム画を作ります。
プログレッシブによるメリットは垂直の空間周波数が2倍になり高画質な映像が得られることです。
「HDギガブリット」では、より美しいフルハイビジョン映像を実現するために、プログレッシブ方式を採用しているのです。
フルハイビジョンでの忠実な色再現性や高画質化を目指して、高解像度とノイズ低減という相反する性能を高いレベルで追及したことです。
一言で言うと、Video camera開発のHistory は、解像度とSNR(ノイズ、感度)の相反する性能(輝度信号、色信号共に)を同時に追求する技術のHistory です。我々のVideo camera開発はこの相反する性能を、高い次元でバランスさせることを目指して取り組んでいます。この目的を具現化する技術がプログレッシブ処理なのです。高解像度化したことによって生まれたノイズを低減するためには、映像信号とノイズの高い分離能力が必要になります。 このノイズをプログレッシブでのフレ−ム処理を適用することで、高解像度とノイズ低減という相反する性能を高いレベルで実現しました。
家庭用ハイビジョンカメラで最も苦労するのは"消費電力をいかに抑えるか"です。
ポ−タブル機器であるVideo cameraは小型化や熱対策、バッテリー駆動の長時間化が求められます。一方フルハイビジョンでは、標準画像のVideo cameraと比べて約5倍以上のデ−タを高速で処理するので、消費電力はデ−タ量に比例して増大することになります。これを両立させることが大きな課題です。
この課題を解決するため、パワーマネージメント設計を見直し、各処理ブロックを最適なクロックで動作させたり、また、各動作モ−ドで使用しないブロックをオフするといった工夫を施しました。また、あわせて最新の半導体プロセスを採用し、システム設計することで消費電力の低減を実現しました。
フルハイビジョンに相応しい高精細で豊かな色彩表現を可能にしたのは、 VICTOR が標準画質のVideo cameraの時代から培ってきたプログレッシブ処理技術を、フルハイビジョンでの画像処理に発展させることができたからです。家庭用Video cameraとして初めて1920×1080フルハイビジョン記録を実現した「GZ-HD7」の高画質化に「HDギガブリッド」は大きな役割を果たしています。
Video camera開発は標準画質からフルハイビジョン画質へと進んできました。今後は、例えば実物がその場に存在するかのように感じられる、さらに高い臨場感を目指してスーパーハイビジョン TV Set (UDTV)や立体映像等の技術開発に取り組んでいきます。ビクタ−のVideo cameraは、今後どのような TV Set 方式になっても高画質/小型化にこだわり、いち早くお客様へご提案できるよう技術開発を続けて行きたいと思っています。