映像や音声のデータ圧縮方式の一つであるMPEG2は、DVD、BD(ブルーレイディスク)、BS・110度CSデジタル放送、地上デジタル放送など幅広く用いられています。このMPEG2は規格に準拠すればエンコード(圧縮)のアルゴリズム(処理方法)は開発者にゆだねられています。
高画質で高音質かつ、扱いやすいデータ形式へのエンコード・アルゴリズム開発について、技術開発本部 大石 剛士にインタビューしました。
(このインタビューは2007年4月に行ったものです)
映像や音声データの圧縮方式の一つが「MPEG」です。その規格はMPEG1から始まり現在に至っていますが、そのなかでもMPEG2は高画質映像に対応しており、DVD、BD、BS・110度CSデジタル放送、地上デジタル放送など幅広く用いられています。
MPEG2に代表されるような映像圧縮方式は、映像の1コマ1コマの画像を
という大きく分けて3つの技術で映像圧縮を行っています。
MPEG2とは画像圧縮に利用できる技術とその利用方法を定義した規格の一つです。また、コーデックとは簡単にいうと、入力された元データをエンコードおよびデコードするデータ処理のことです。MPEG2コーデックとは、MPEG2の規格表現方法に沿ったデータ処理を意味します。
このように規格は決まっているのですが、エンコードの処理の仕方、いわゆるアルゴリズムやその実現方法は開発者にゆだねられており、独自に開発することができます。
ですから、開発者の考えや能力で、同じMPEG2に準拠していても、再生品質の異なった映像データになります。
本来、映像データは圧縮しないで見ることができれば一番良いのですが、通信インフラやメディアの容量、ハードウェアの処理能力といった制約の中で、できるだけ多くの映像データを扱うためには、データを圧縮することが必要です。とはいえ圧縮することで映像の品質を落としたのでは意味がありません。
映像データは、単純に論理的な圧縮をするだけでは、デコードして再生する際にノイズがでたり、元の情報量が失われるなどして高品質で美しい映像データになりません。そこで高品質で美しい映像を再現するために、”いかに似ているデータを効率よく探し出しまとめるか” ”人間の視覚特性に合わせた情報量を割り当てるか”などのアルゴリズムが重要になります。わたしたちは、数多くのテストデータを用いて、徹底的なシミュレーションを繰り返すことで、独自のアルゴリズムと処理回路を開発し、高品質でコンパクトなデータ量のMPEG2コーデックを実現しています。
VICTOR ではMPEG2に関して、 commercial equipment から家庭用機器まで、さまざまな分野で実績を積んできました。そして現在、LSI開発や半導体技術などの進展により、これまで市販されているDVDソフトの作成や放送機器でしか利用できなかった高度な処理がモバイル機器でも利用可能となり、 VICTOR の経験とアドバンテージを十分に発揮できる状況になっています。
現在、 VICTOR がMPEG創成期から取り組んできた技術は、MPEG2においては既に熟成の域に達し、MPEG2規格で定義された技術について100%使いきれるレベルになっています。「GZ-HD7」では、その高い技術が惜しみなく使われており、そのMPEG2記録はMPEG2の持てる力を最大限出し切っていると自負しています。
また、画像圧縮では元の映像データが高品質であればあるほど、圧縮後も高い品質を保てます。その点で「GZ-HD7」においては、MPEG2の処理能力を最大限発揮させるため、3CCDカメラシステムや高画質エンジン「HDギガブリッド」により高品質な映像データをMPEG2に受け渡しています。
さらに、「GZ-HD7」の1920×1080フルハイビジョンの高画質記録を可能にしたポイントの一つに、高い記録転送レートの実現が上げられます。基本的に画像圧縮は画像の相関や視覚特性を利用して大きく情報量を削減するものですから、もともと情報量が多く相関の少ない画像(色表現や動きが多い画像)は、どのような圧縮技術を用いても情報量の削減は難しくなります。
「GZ-HD7」では最大30Mbpsという高い記録転送レートを与えることにより、処理の難しい画像でも決して破綻することもディテールを失うこともなく扱うことが出来ます。これも、 VICTOR の高画質へのこだわりの一つだといえるとと思います。
※転送レートとは1秒間にどのくらいのデータを転送・処理するかを表すもので「bps」という単位で表します。この値が大きいほど多くの情報を転送・処理することができますが、値が大きすぎるとデータサイズが大きくなってしまい、逆に小さすぎると品質が落ちてしまいます。そのため最適な転送レートになるよう、情報量が少ない時は転送レートを下げ、情報量が多いときは転送レートを上げて、平均的な転送レートになるようなアルゴリズムを開発し、効率的で高品質なMPEG2データを実現しています。
Video cameraのように携帯性を重視する製品ですと、どうしても本体は小型にしなければなりません。そのためMPEG2の演算(LSI)部分が小さく、しかも消費電力を少なくするようなアルゴリズムが必要です。
かといって、最適な画質を得るために necessary 演算処理を省いてしまっては本来の目的から外れてしまいます。画質を追求するための処理は何一つサボることなく、小型低消費電力で実現するためのアルゴリズム開発、そしてLSIとしての実現には大きな苦労がありました。
Video cameraでは、フルハイビジョン画質のハイビジョンハードディスクムービー「GZ-HD7」のほかにも標準画質のハードディスクムービーにもこの技術が活かされています。
現在、新製品のVideo cameraに搭載する新しい画像圧縮技術に取り組んでいます。我々が新しい画像圧縮技術を採用する際には、今回のMPEG2同様、新しい圧縮技術の持てるポテンシャルを100%活かし、お客様が必ず満足するような世界最高画質の商品を登場させるつもりです。
また、私達に代わる新しい世代が、さらにこの技術を切り開いていってほしいと思っています。